小太郎の左腕 和田 竜
読み終えました。
前作のぼうの城に次ぐ新戦国エンターテイメント小説。
こんな吹き出しが踊る和田竜さんの作品は、戦国小説でありながら
現代文のように入りやすい。前作のぼうの城のように登場人物の描写が
いい。一人一人を好きになってしまいます。
時代は1556年長篠の戦いの少し前あたりでしょうか。
まだ火縄銃が戦で使われ始めた頃で主人公小太郎の神懸かりな銃の腕に
敵味方なく驚いている様子が手にとってみえる。
数的有利な児玉家と負傷者の多い戸沢家の戦いが中心に話は
進んでいく。籠城する戸沢家の兵は日に日に弱っていく。
物語の実質的な主人公、戸沢家の猛将・林半右衛門は
決死の覚悟で心やさしい小太郎を戦に出す。勝ち負けが生死に繋がる
時代だからこその選択肢。選ばずにはいれなかった心情には想像を
絶するものがある。
滅びの美学ではないがまさに「武士道とは死ぬことと見つけたり!」的な
男達の生き様には胸が苦しくなる。
最後まで読んでも結局だれも幸せになってない事で苦い読後感はありますが
この時代に生きる武士たちの自尊心の高さと忍に生きる人間の性のような
ものを感じました。
和田竜さんの描く人物にはすぐに愛着がわいてしまいます。
文章が脳に入るとすぐ目の前に戦の情景が浮かんでくる。
小太郎の左腕おすすめです♪